同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


「先輩……失恋って、前に言ってた“片想い”の人ですか?」


八重ちゃんが傍に座り、心配そうに顔を覗き込んでくる。


「うん……そう。もう秘密にする必要もないからぶっちゃけると、企画課の課長、わかるかな? 私の同期で比留川くんっていうんだけど……ついさっきまで、彼と同居してて」

「課長……比留川さん……あっ!」


何かひらめいたらしい八重ちゃんは、再び壁のポスターを眺め始める。

そして今度はさっきの王子キャラの隣のポスターでクールな表情をした、青い髪で黒スーツのキャラを指さすと、目を輝かせて力説した。


「この彼に似てる方ですよね! ちなみに彼は、アブ刑事で白石渉の相棒をしている、黒岩隼人(くろいわはやと)なんですけど!」


ははぁ……白石と黒岩で対になっているキャラなのね。

比留川くんの方がもっと素敵だけど、少し似てるかなぁ。


「……うん、たぶんその人」

「やっぱり。比留川さん、近寄りがたいクール系ですよね。でも、そんな人と一緒に住んでたってことは、心を許されてたんじゃないんですか……?」


八重ちゃんが首を傾げるのも無理はない。私だって、比留川くんとの明るい未来が待っていると信じていた。

一緒に生活用品を買いそろえるために出かけた先で、ペアのマグカップを買ってくれたり。

並んで台所に立って料理したり、膝枕してテレビ見たり。

まるで新婚みたいな同居生活に、期待とドキドキは膨らむばかりで……。


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