同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
親切ぶった笑顔を浮かべているけれど、目が笑っていない。
やっぱり、彼女は私に“迅に近づくな”と言いたいんだろう。
それにしても、私を褒めているようで完全に失礼な発言だし、さすがに腹が立ってきた。
比留川くんがもし本当に沙弓さんの言うような人だったとしても、そもそもそんな忠告は余計なお世話。
私は私の意思で比留川くんを好きになって、告白して……結果失敗したけれど、彼への真剣な想いをこんな形で他人に踏みにじられたくない。
それが、たとえ呆気なく散ってしまった恋でも……。
私ははじめて沙弓さんを強気で睨み返し、ドスの利いた声を出した。
「……だから何なん?」
いきなり態度の変わった私に、沙弓さんが半歩後ずさる。
たぶん私は鬼のような顔をしているんだろう。でも、もう止められない。
「私になんじゃかんじゃ言うとらんと、アンタはアンタで比留川くんにぶつかりゃええだけじゃろ! こっちは仕事あるけぇ、ええ加減やっちもねえ話に付きおうてられんわ!」
ふん、と最後に盛大な鼻息を鳴らし、私は沙弓さんに背を向けトイレを後にした。
最後に見た彼女はぽかんと大きく口を開いて間の抜けた顔をしていた。
おそらく私の言葉の半分も理解できなかったのではないだろうか。