同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
岡山弁というのはこういうときに便利。
時には“日本で最も汚い方言”などと言われてしまうこともあるけど、喧嘩にはめっぽう強いのだ。
加えて、忙しくお店を営む両親に代わって私を育ててくれた祖母の影響で、同年代の友達が使わないような昔ながらの岡山弁に触れながら成長したから、あの独特のあたたかみや発音も大好き。
そう……私、本当は、岡山のことも、岡山弁も……。
私は廊下の途中で、ぴたりと足を止めた。そして、自分に言い聞かせるように呟く。
「……いいんだ、好きで」
上京してから今まで、岡山出身であることや、岡山弁をなんとなく恥ずかしく思っていた。
それは、嵐に振られたときに言われた言葉が原因でもあったけど……カッコいい都会の女になろうと努力するにつれ、その気持ちはより大きくなっていた気がする。
でも……別に東京が、東京に住む人たちが偉いわけじゃない。
都会と田舎を比べてどっちがいいのかなんて人それぞれだし、両方好きでもいいのだ。
別に、東京で働くカッコいい岡山出身女子でもいいじゃない。
時には方言が飛び出したっていいじゃない。
――それこそ、嘘偽りのない、難波みちるの姿なんだから。