同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


お客様との電話を終え、癒しブレンド取り寄せの手配も済んで一段落経った頃、就活生たちはひと通り見学が済んだらしく開発部を出ていった。

その時に営業部の社員が来て、案内役を比留川くんから引き継いでいたので、彼はもうお役御免みたいだ。

おそらく、フロアごとに担当者がいるのだろう。

慣れない仕事で少し疲れた様子の彼が首を回しながらデスクに座るのを見計らい、私は席を立った。

……まさか、比留川くんが助け舟を出してくれるなんて思わなかった。

単に仕事とプライベートとを分けて考えているだけかもしれないけれど、素直にうれしかった。同僚として、普通に接してくれたこと。

だから私も“同僚として”でいいから、きちんとお礼を言いたい……。

企画課に足を踏み入れて、緊張しながら彼の背中に近づく。


「比留川くん」

「ん?」


くるりと椅子を回転させて、彼がこちらを向く。

特に迷惑そうな表情をすることはなく、かといって好意的なわけでもないけれど、いつものクールな比留川くんだ。


「あの、さっきは……」


ありがとう、と続けようとしたところで、私たちのもとにひとりの人物が歩み寄ってきた。


「よかった、ちょうどふたり揃ってるね。ちょっと応接室に来てくれないかな」


そう言ったのは吉沢部長で、私と比留川くんはなんだろうと顔を見合わせた。


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