同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


それから部長とともに三人で、開発部と同じ階にある応接室へと向かった。

廊下を歩いている途中、部長が私たちが呼ばれた理由を教えてくれる。


「この間の、生豆の収穫時期が違った件で、実際にその豆を納品に来た高木物産の担当者が謝りに来てるんだ。現場と営業の責任者、それからいちおう僕も立ち会ったんだけど、きみたちにも謝りたいと強く望んでいて」

「……どうして私たちに?」

「生豆のことが原因で現場とひと悶着あっただろう? そのことを少し話に出したら、きみたちに悪いことをした、是非謝らせてくれって」


へえ……なかなか律儀な担当者さんなんだな。

あの件では確かにいやな思いをしたけれど、それは現場の態度のせいだし、もう気にしていないのに。


私たちが応接室に入ると、ソファでうなだれている天然パーマの男性が目に入る。

彼は開いたドアの音に気付くと、即座にシャキッと立ち上がって九十度に腰を折り曲げた。


「自分は、高木物産の蒲生(がもう)と申します!このたびは、自分の報告不足のせいで多大なるご迷惑をおかけしましたことをお詫びに参りました! 大変申し訳ございませんでした、この通りです!」


ちょ、ちょっと大げさな人だな。誠意は伝わるけれど、声が大きすぎる。

引き気味の私と比留川くんに対し、この謝罪をさっき一度経験している部長はくすくす笑っている。


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