同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
玄太に指摘された時には、すでに身体が芯まで冷え切っていて、寒くてたまらなかった。
急にそのことを実感した俺は海から上がり、駐車場に移動すると車に積んでいたポリタンクのお湯を頭から浴びた。
それからウエットスーツを脱いで乾いた服に着替えたものの、体の震えが止まらない。
「……さみい」
「お前ソレやべーぞ。帰ったらすぐ風呂入れ風呂」
運転手を買って出てくれた玄太の隣で、俺はがたがた震えながら助手席に丸まっていた。
頭が熱くぼうっとして、気が付いたら実家の畳の部屋で布団に寝かされていて。
「……帰りてえ」
もうろうとする意識のまま、俺の傍らで漫画を読む玄太にそう伝える。
「何言ってんだお前。せっかく実家にいるんだからゆっくり寝かせてもらえばいいだろ」
「……おふくろの味よりみちるの料理が食いたい」
みちるは本当に料理が上手である。しかも、彼女の得意分野は毎日食べても飽きない家庭料理。
同居生活はまだ短いとはいえ、俺の胃袋はとっくに掴まれていた。
「ははーん、身体が弱ってるからみちるちゃんに会いたいんだな。で、あわよくばお医者さんごっこがしたいと」
「馬鹿言うな……妄想するだろ」
「よし、健康な証拠だ」
玄太はくだらない冗談ばかりでまともに取り合ってくれず、俺はひとりでも東京に帰ろうと心に決めた。
そして翌日、まだ誰も起きてこない早朝に、俺は足音を忍ばせて廊下を歩き玄関に向かった。
肝心の体調は、昨日より悪化していた。