同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
それが、いつからだろう。
彼女が大学に現れない日があると、無意識にその姿を探している自分がいた。
「たまに、彼が待ち合わせた場所……たとえば食堂とか、中庭とかになかなか来ないとき、すげぇしょんぼりしてるみちるを見かけてさ。俺は赤の他人なのに、“彼氏早く来てやれよ”とか無駄に気を揉んだりして」
最初は、ただひとつのカップルをあたたかく見守っているつもりだった。
しかしやがて、自分の中にそれ以上の気持ちが生まれていることに気が付く。
「一回、みちるが待ってる場所に、いつまで経っても彼が来ない日があってさ……俺、別の場所で見たんだ。彼が、別の女とキスしてるところ。……それで、初めてみちるに声を掛けた。お節介だと思ったけど、黙って見てることもできなくて」
そこまで話して、俺は一度、コーヒーを口に含む。
みちるはこめかみに手を当てて必死で記憶を手繰り寄せているようだけど、たぶん俺のことは覚えていないだろう。
だって、彼女は俺の言ったことを少しも信じてくれなかったのだから。
* * *
「……アンタの彼氏、浮気してるよ。さっき、講堂の裏で別の女といるところを見た」
大学二年の終わりごろ、まだ春の入り口で寒さが残っていたあの日。
中庭に設けられたベンチに座る彼女に、俺は事実だけを淡々と告げた。
彼女は知らない男にいきなり話しかけられて戸惑っていたけれど、微妙な笑みでこう返した。
「人違い、ちゃいます?」
「……別に信じる信じないはアンタの勝手だけど。俺は見たんだよ、キスまでしてるとこ」