同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「……好きな人がいるの」
嵐の目を正面から見つめ、胸の内を告白する。
嵐はそのことが最初からわかっていたかのように落ち着いていて、私の話を静かに聞いてくれた。
「でも、まだ付き合ってはいなくて……なのに、思わせぶりな言動が多い人で。期待させたかと思えば、冷たい態度取られて。彼の考えてること全然わからないのに、諦められなくて……」
自然と、頭の中に比留川くんの姿が像を結ぶ。
同時にきゅっと胸が締め付けられて、わけもなく泣きたくなる。
彼は今別の場所にいるのに、心はすぐに彼のところに飛んでいく。
……やっぱり私、比留川くんが、大好きなんだ。
「みちるの気持ちは伝えたのか?」
「うん……。でも、彼の方はなかなか本音を言ってくれないの」
「ふうん……それはむかつくな。俺が聞き出してやろうか?」
「え? そんなこと、どうやって……」
嵐はスッと手のひらを出し、「携帯貸して」と言ってにっこり微笑んだ。
まさか……直接彼と話すつもりじゃないよね? 疑いを抱きつつ、スマホを手渡す。
「名前は?」
「彼の? 比留川迅……って、まさか嵐」
「俺が直接みちるを幸せにできたら一番よかったけど、それは無理だってわかった。だからこれが、昔さんざんみちるを傷つけことへの、せめてもの罪滅ぼしだ」
嵐はそう言うと、本当に比留川くんに電話をかけ始めてしまった。
私の番号からいきなり知らない男の声がして、変な誤解をされないだろうか。
そもそも嵐は、どんな風に彼の気持ちを聞き出すつもりなんだろう。
私はハラハラしながら、目の前の嵐を見つめていたのだった。