にゃおん、とお出迎え
さっきまでのうるさい子たちは帰ったのか、今はこの子ひとりだ。
「にゃー」
何してるの?
声をかけたら、その子はあたしに気付いて、ぴょんとジャングルジムから飛び降りた。
「モカちゃん」
嬉しそうに笑われたら、悪い気はしない。
でも、触っちゃだめよ? 暑いから。
「にゃーおん」
今日は一人なの?
ね、その手に持ってるの何?
その子は右手に三枚くらいの紙を持ってる。
ひらひら、風に揺れるから何だか気になっちゃうな。触っちゃダメかしら。
ちょっとだけと前足を伸ばすと、女の子は驚いたように身を引いた。
「ごめん、これはダメ」
「みゃー」
ダメなの?
ひらひら、楽しそうなんだけど。
「あのね。大事な手紙だから」
両手で持ち直す。そして、聞いてもいないのに話し始めた。
「でも返事をどうかいたらいいのか分からないんだ」
「みゃーお」
そうか。よくわからないけど、大変なのね?
じゃあ、あたしは行こうかな。
すっと背中を向けたのに、女の子はなぜかあたしの正面に回り込む。
そしてため息とともに一言。
「困ったなぁ」