ただあの子になりたくて


「なんだっていいでしょ」

「部活も塾もないあんたがすることなんて、遊びくらいでしょ。一学期、成績よくなかったじゃない。ねえ、将来のこときちんと考えてるの?」

耳がキンキンして、お母さんを一瞥だけして顔をそらした。

ほんの一瞬でも焼き付く、眉間にしわを寄せたお母さんの顔。

お父さんへの不満もたまっているのか、今日はまた酷そうだ。

気づけばいつからか、こんな顔しか見ていない。

お互いに、口を開けば決まってケンカになる。

けれど、そうはわかっていても、自分を止められない。

もう、うんざりだ。

何一つ秀でたもののない地味な私に、どんな将来があるというのだろう。

私は、手のひらが痛いほど拳を握った。

「どうなろうと、私の将来じゃん」


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