ただあの子になりたくて
部屋の明かりも、外灯もついていない。
飾り気のない庭を、冷えた夜風が流れて雑草が頭を揺らす。
濡れた素肌の膝が冷えて、私はぞくりと背筋を伸ばすけれど、府抜けたように笑うしかなかった。
私は今までなぜ、こんなに空っぽの家だということに気づけなかったのだろう。
今まで何で、こんな救いようのない家にしがみつこうとしていたのだろう。
どんなに冷たい光でもむらがってくる羽虫たちの姿さえない。
見放された家だ。
今なら笑える。
自分が馬鹿なことをして耐えていたのだなと。
ここまでくれば、ほんの少しだけ昔の自分が愛しくなる。