ただあの子になりたくて
けれど、こんなにも見えるものなのだ。
ひとつの明かりも付けていないのに、そこは十分すぎるほど見渡せた。
私は密かに目をみはり、リビングのさらに奥を、入り口の陰から見つめた。
「意地を張ってもしょうがないだろ。また倒れたらどうする? 寝室で休んで来い」
低く沈んだ声が、物静かなリビングによく響く。
窓に近い場所で、メガネのレンズが青白い光を放った。
微動だにしない大きな背中。
声も顔も無表情。
こんな時までとことんお父さんらしい。
すると、二人掛けのソファーの方から衣ずれの音が聞こえて、私はかたく口を閉ざす。