ただあの子になりたくて
大音量にも負けない力強い声。
私の後ろに回り込んで背を優しく押し出してくれる手。
ちらりと振り向き見れば、拓斗がはじけとぶような笑顔で私を見送っている。
もし助演男優賞があるとしたら、それは間違いなく拓斗ものだろう。
否、だろうなんて言葉では足らない。
絶対に贈りたい。
椿のことが好きなくせに、蒼介が好きな椿を応援なんてして、救いようがないくらいお人好しなやつ。
私にはたとえ逆立ちしてもできなかったこと。
これでナンパをしなければ、私も惚れてしまっていたかもしれないなんて、冗談だけれど少し思う。
それくらいに、拓斗のことを私は尊敬する。