ただあの子になりたくて
何かがおかしい。私は何か忘れている。
青ざめてぐるりと部屋を見渡した。
品のいい真っ白なベッドに、これまた女子力の高そうなピンク小花柄の布団。
見慣れたタンスではなくて、背の高い純白のクローゼット。
ものが一つも散らかっていない綺麗な机。
私の部屋とは似ても似つかない。
クローゼット横の楕円形の姿見に、一人の人間が映りこむ。
恐る恐る鏡をのぞき込んだ私は、顔をべったりと触って唖然とした。
「私、じゃない……」
いつもよりも多く見下げなくてはならない長い脚。
胸にまでしなやかに流れる黒髪。
小さな顔に、愛らしい泣きぼくろ、きりりとした二重瞼の大きな瞳。