ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
『…いいよ』


彼氏いない歴が実年齢だとは言えずに応じた。
郁也は忙しい人で、デートにはなかなか誘ってもらえなかった。


初めてのデートは付き合い始めてから1ヶ月経った時。
ショッピングモールに併設された映画館で、ホラー映画を一緒に観た。




(……あの時、女子らしく『キャー』と叫んでいれば良かったんだろうか)


あまりな出来事を前にして、そもそもあれが間違いだったのだろうか…と考えた。


(でも、退屈な内容だったし……)


悲鳴をあげるほど怖くもなかった。
だから平然と見ていただけでーー。


『ケイちゃんはホラー平気なんだね』


多少ガッカリさせたような気がして、慌ててその場を取り繕った。


『こ…怖いお面とか見慣れてるせいよ、きっと』


懸命に弁解した。
商品管理部で検品をしている私は、職場で嫌という程ホラーなものを見ている。



『そっか』


郁也はの態度はアッサリしたもんだった。
あからさまに嫌な顔を見せる訳でもなく、そういう子もいるよね…と、軽く受け流してくれた。


手を握る程度の幼いデートを終えて帰れば、郁也からラブメッセージが届いてきて。



『次のデートではリベンジさせて』



2度目のデートはアミューズメントパークだった。
皆が怖がるスクリューコースターも平気な顔で乗ってしまった。



(やっぱりアレが一番の間違いだったのかもしれない……)


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