愛と音の花束を
音楽が一旦頂点に達した後の47小節目、ソロが長い休みに入るタイミングで、早瀬先生が曲を止めた。

やばい、という雰囲気がみんなから漂った。

仕方ない。これでいい。痛いけど。

「こんな感じですが、気合い入れ直しますか?」

早瀬先生が静かな口調で言いながらみんなを見回し、最後に私を見た。

胃がキリキリする。

ここは私が言うしかない。
オケがこの程度のレベルなのは私の責任でもある。

「申し訳ありません、最初からお願いします」

早瀬先生は、次に三神君に向かって言った。

「三神も途中からゆるめるな」

ああ、やっぱり。



メンコンの練習が終わると、三神君は真っ直ぐに、部屋の後ろにいる椎名の元へ向かった。

椎名はスコアと手元のメモを見せながら話し、三神君がうなづきながら自分の楽譜に何やら書き込んでいる。

以前三神君が、椎名にアドバイザーしてもらうって言ってたけど、まさか、ほんとに?
まあ、素人の意見を聞いた方が新鮮なこともあるのかもしれないけど……。
2人は真剣な顔で話し合っている。
……何話してるんだろ。

「男同士、やらしー話でもしてるんじゃないかしら?」

いつの間にか、指揮台から降りた早瀬先生が私の隣に立っていた。

「先ほどは……」

すみませんでした、と続けようとすると、それを遮られた。

「焦ることないわ。本番まで一緒に頑張りましょ。あっちが男同士で何やら企んでるなら、こっちも女同士、共同戦線張るまでよ」

そう言いながらいたずらっぽく笑う。

こんな私にも気を遣ってくれるんだから、大した女性だ。


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