愛と音の花束を


暁が、視線を感じたのか、私に気づいた。

そして、周囲に、じゃあまた、と挨拶すると、こちらにやってくる。



……どんな顔したらいいんだろう。

動揺が収まらないうちに、彼は私の前に立っていた。

環奈に言わせると、『モサっとした冴えない理系男子』。
でも、穏やかで優しい中に、決めた道を進む芯の強さが垣間見えて、その雰囲気に憧れていた。

眼鏡の奥の目は、細くて。
でもそれがいつも笑ってるみたいで。
本当に笑うと一層細くなって。
その視線が私に向くと、すごく嬉しかった。

……大好きだった人。


暁は、微笑みながら、

「久しぶり」

と言った。

懐かしい、この声。
柔らかくて、心地よくて、耳に入るといつもドキドキした。

「……久しぶり」

やっとのことで、それだけ言う。

「この間、こっちに帰ってきた」

「……お帰りなさい」

「コンミスお疲れ様」

暁は、手に持っていた花束を差し出してきた。
白いカラーが5本。シンプルな花束だった。

「ありがとう……」

「結花がコンミスやるって知らなかったから、さっき終わってからダッシュで買ってきた。カラー、まだ好き?」

覚えていてくれたんだ。

じわりと嬉しさが湧き上がる。

私がうなづくと、暁はほっとしたように笑った。

目が細くなる。
その笑顔が私に向けられて、
ぼうっとした頭に、
幸せだった頃の感情が蘇ってきた。
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