愛と音の花束を


暁とは、この市民オケで出会った。
私が20代半ばの頃。
入団してきた3つ歳上だという彼は、とてもヴァイオリンが上手かった。小さな頃からジュニアオケで弾いたり、大学オケでコンマスをやっていたという。
市民オケでも、コンマスやセカンドトップを何度かやった。
何度か、というのは、仕事が忙しかったからだ。
彼は市内にある国立の宇宙研究機関に勤めていた。
星や宇宙といった壮大な研究をしている博士号を持ったエリートと、専門学校卒業で小さな花屋で親の手伝いをしていた私が何故か付き合うことになったのだから、趣味のつながりというのはすごい。

3年くらい付き合った頃、彼のアメリカ駐在が決まった。宇宙研究者としては夢の舞台だというのは私でさえわかる。
プロポーズされて、一緒にアメリカについてきてほしいと言われたけれど、その頃ちょうど、父が腰を悪くして働けない状況の中、店長を継いだばかりだった。

2人で何度も話し合った。

結果、別れることになった。

タイミングが悪かった。

誰も恨めない。

ただ悲しくて、毎晩こっそり泣いた。




< 241 / 340 >

この作品をシェア

pagetop