愛と音の花束を
しばしマニアックな話に花を咲かせた後、三神君が言った。

「そうだ。それと、2月のアンサンブルコンサートなんですけど、『動物の謝肉祭』をやろうと思ってるんです」

サン=サーンス作曲、組曲『動物の謝肉祭』。
有名なのは何と言ってもチェロが奏でる『白鳥』。あの曲はこの『動物の謝肉祭』の中の一曲なのだ。たぶん真木君が弾くんだろう。

編成は弦5部とピッコロ・フルート・クラリネット、ピアノ2台、木琴・鉄琴(本来はグラスハーモニカなのだけど、うちのオケだと鉄琴で代用)。
定演ではできないメジャー曲だから、まさにアンサンブルコンサート向け。

「永野さんもいかがですか?」

「お誘いはありがたいんですが、土日の練習に参加できないので、残念ながら」

「そうですか。ではヴァイオリンメンバー、定演に支障が出ない範囲で集めたいんですが、よろしいですか?」

「もちろんです」

答えてから、ふと、思いついた。

「椎名さんも誘ってみてもらえますか? 去年羨ましそうにしてたので」

彼ならもう弾けるはずだ。

三神君は、満面の笑みを浮かべた。

「もちろんです!」

いや、そんなに嬉しそうにしないで。

「私が頼んだってこと本人には言わないでください」

「駄目ですか?」

「絶対駄目です」

彼は肩をすくめて、飲み物を口に運んだ。
……何やら微笑みを浮かべつつ。




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