愛と音の花束を



「フランクのヴァイオリンソナタっ‼︎⁉︎」

公民館の大部屋に、ヴィオラの和歌子さんの黄色い声が響き渡った。

みんな一斉にそちらに注目する。

和歌子さんの前では、三神君が苦笑していた。


年が明けると、アンサンブルコンサートの準備が本格化する。

練習後、三神君が、実行委員の和歌子さんにエントリーシートを提出したらしい。

その曲が、フランクのヴァイオリンソナタなんだ!

ヴァイオリンメンバーはもれなく、他パートの一部も一斉に盛り上がった。

「ついに来た、コンマスのヴァイオリンソナタ!」
「聴きたいっ!」
「フランクとか嬉しすぎる!」
「何なら全楽章でもいいんですけど、何楽章ですか⁉︎」

「第4楽章ですって!」
和歌子さんが答えると、またも歓声が上がる。

フランクのヴァイオリンソナタは、彼と同じベルギー出身のヴァイオリニスト、イザイの結婚祝いとして作曲された。
結婚を控えた三神君にはぴったりの曲。
しかも数あるヴァイオリンソナタの中でも傑作とされ、人気も高い。
ヴァイオリン弾きが盛り上がるのも当然だ。
私もすごく聴きたい!

「ピアノは誰ですか⁉︎」

ヴァイオリンソナタは、ヴァイオリンとピアノで演奏する。三神君が誰と弾くのかは、当然気になるところ。

今まで彼はアンサンブルコンサートでヴァイオリンソナタを弾いてこなかった。
一緒に弾けるピアニストがいないからではないか、というのがみんなの捉え方だった。
その三神君がとうとうパートナーのピアニストを見つけたのだ。

「…………空白だわね」

和歌子さんがエントリーシートから顔を上げて三神君を見る。

みんなの視線も一斉に三神君に集中する。
< 270 / 340 >

この作品をシェア

pagetop