愛と音の花束を
そんなのんびりムードは、袖からの足音とともに、瞬時に引き締まった。

ピリっとした雰囲気の那智が姿を見せた。

ナーバスというのではなく、集中した、真剣な表情。

美しい、と思った。

三神君がソリストをやった時に感じたような、自分のすべての力をもって、大きなものに対峙しようとする、神々しさ。

どうか、彼が力を発揮できますように。


那智がピアノの近くまで歩き、こちらを向くと、主に私の後ろから盛大な拍手が沸き起こった。

那智は、深々とお辞儀をした。

彼が椅子に腰掛けると、拍手がやみ、ホールに静寂が満ちた。

彼は、何度か椅子の位置を調整し、
視線を上げて、グランドピアノの屋根を見つめ、
それから、目を閉じて深呼吸した。


……胃が痛い。

音楽の神様。
どうか、彼にご加護を。


彼は、目を開くと同時に、

両腕をすうっと動かし、

少し前のめりになり、指に体重をかけるようにして、

最初の和音を響かせた。


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