愛と音の花束を
……軽くなった両手が妙にスースーして気持ち悪い。
別にいつも肉体労働してるからこれくらい何でもないのに。
でもここで下手に断ると、またお説教されかねない、と思ったので、素直に任せることにした。

「……ありがとう」

「どういたしまして」

ホールに向かって並んで歩く。

「ふむ。結花ちゃんはもしかしてお花屋さん?」

「……そのメルヘンチックな呼び方やめてくれる?」

椎名とはこの頃タメ口で話すようになっていた。
……ほら、面倒だから。

「わあ、当たり⁉︎ だから“花を結ぶ”“花で結ぶ”で結花ちゃんなんだ!」

父親がロマンチストなのだ。

「実は買い出し係かもしれないじゃない」

「結花ちゃんを使いっ走りにできる団員がいるわけないじゃん」

「…………」

「いや、違うよ! 威張ってるとかじゃなくて、古参としての威厳があるというか……重鎮の重みというか……リーダーっぽいっていうか……。あっと、それにさ、こんな朝早くから開いてるお花屋さんはないでしょ」

現在、朝8時45分。

「昨日から準備してたかもよ」

「それに、前に握手した時、水を使う仕事なのかなって思ったから」

手荒れしているということね。

やっぱりこいつ頭回るな。
< 87 / 340 >

この作品をシェア

pagetop