狼な彼と赤ずきん
「あの時、父上が全員殺すことができていたら……そしたら、お前がこんな目にあうこともなかったのに」



声を震わせるアドラン。


私は我慢ができなくなって、彼の頬を思い切り叩いた。



「アドランの馬鹿!いえ、街の人たちは全員馬鹿だわ!森のみんなは汚れてなんかいない、悪いことなんて何もしてない!」



「だから、それは洗脳で……」



「違うわ!私は……私は狼さんと一緒に住んで、彼のことを愛していて、彼も私のことを愛してくれて……」



叫んでいる途中で声が詰まってしまう。


最後に、血まみれになりながら私の名を呼んだ彼の姿が脳裏に焼き付いて離れない。


狼さん、狼さんと繰り返す私を見つめるアドランの瞳に、嫉妬の色が宿った。



「そいつは、お前に一言でも愛していると言ったのか?」
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