狼な彼と赤ずきん
周囲の人々は盛大に祝ってくれたようだが、私は終始浮かない顔だった。


そんな私に対して、「不浄の森で生気を吸い取られたのだわ、可哀想に」とうわさする貴婦人たちもいて、バージンロードに立っているだけで心がぐちゃぐちゃに押しつぶされてしまいそうだった。



「それでは、誓いのキスを――」



軽く唇が触れ合うだけのそのキスは、ひどく冷たかった。




花嫁の体調がすぐれないからという理由で、披露宴はまた数ヵ月後に行われることになった。



結婚式の後、私はあらためて屋敷を案内される。


噴水のある大きな広場。


東塔には宝物庫、西塔には書物庫。


舞踏会が行えるほどの大広間。


シェフが常駐している厨房、食堂。



しかしそのどれも、私の心を弾ませはしなかった。
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