狼な彼と赤ずきん
「狼さん!!」



私はすぐに彼に駆け寄ろうとした。


しかし、「嘘の愛に騙されていた」というアドランの言葉を思い出して、ためらってしまう。


その場から動けずにただ視線を泳がすばかりの私を、まるでかばうかのようにアドランが腕を回してきた。



「何しに来た、獣!傷はもう塞がったのか?けっ、回復力だけはバケモノ並みだな……お前、どうやってここの警備をくぐり抜けてきたんだ!」



悪態をつくアドラン。



「警備の兵士どもは全員みぞおち一発だ。怪我ももうかなり治ったぜ」



狼が鼻を鳴らすが、よく見ればシャツの胸のあたりにはまだ血がにじんでいる。


私は彼を見つめ、「無理はしないで」と一生懸命視線で伝えた。


「大丈夫」と言うように頷く彼。



「俺の赤ずきんに手を出すんじゃねえ、人間。そいつは俺のものだ。返してもらおうか」


ずん、とアドランに詰め寄る狼。


アドランは馬鹿にしたように笑い始めた。
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