狼な彼と赤ずきん
開始から五分ほど。


決闘は大きな局面を迎えた。


アドランが、卑怯なことに狼の足を狙い始めたのだ。


狼はステップを踏むように華麗に剣を避けていたが、バランスを崩した拍子に足首を突き刺されそうになる。



「はっ!」



剣を避けきれないと判断したのだろう、彼は足首に向かってきた剣を思い切り蹴り上げた。


宙を舞う剣。


それはレンガ造りの暖炉に跳ね返り、まっすぐ私の方に飛んできた。



「きゃああああ!!」



突然のことに足がすくみ、逃げることができない。



「赤ずきん!!」



そんな私に狼が飛びつき、安全な部屋の隅に力いっぱい押しのけた。


代わりに、剣が彼の肩をかすめ、皮膚が破れて出血する。


肩を押さえてうずくまった彼の喉元に、アドランがとどめとばかりに短刀を向けた。



「……狼。お前の負けだ」


「ああ……」


私は絶望して、その場に座り込んだ。


心のどこかで、狼のことを信じていた。


いつか助けに来てくれると。


きっとアドランに打ち勝ってくれると。


しかし、彼は負けてしまった。


私はこれから永遠に、アドランのものだ――。
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