狼な彼と赤ずきん
「それは……っ」



反論しようとした警備団員に、ギルバートは片手剣を突きつけた。



「証拠ならあるぞ!貴様らは森を攻め込むための正当な理由を作って俺ら騎士団を動かし、侵略に成功したら手柄を国王に報告するつもりだったんだろう」



極秘と書かれた書類を突きつけられ、たじろぐ警備団。


私は手で口を覆った。


手柄――そんなもののために、あの森に対する悪い噂を流して、騎士団に攻め込ませただなんて。



「そうまでして、地位が欲しいか!騎士道に反する者は、粛清するまでだ!やれ!」



ギルバートの掛け声で、その場で戦闘が始まった。


飛び交う怒号と血しぶきに、私は目を覆った。


すると馬に乗った一人の騎士が私たちに近寄り、手を差し伸べてきた。



「アリシア様、そして森の方。家までお送りします。さあ、早く乗って」


彼は狼と私をひょいと担ぐと、森に向かって馬を走らせはじめた。


狼が痛みに唸っている。


どうか、どうか耐えて――。
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