おためしシンデレラ
何をするでもなくぼんやりと座っていた莉子が、マンションの入口のインターホンの音で我に返った。
時計の針は10時を指している。
こんな時間に・・・・・?
モニターを覗くと見慣れた三村の顔。
慌てて解錠して玄関のドアを少し開けてエレベーターが到着するのを待った。
5分ほどで三村がエレベーターから降りてくる。
「社長・・・・・?」
三村の姿を確認した莉子がドアを大きく開けた。すぐに三村が気付き、莉子を押してドアの中に入る。
「え、あの、社長・・・・・?」
三村が無言で莉子の額に手を当てた。
「熱はあらへんな」
「は・・・・・?」
「メシが食われへんくらい調子悪いのか?」
「いや、あの・・・・・軽い胃もたれでイタリアンはちょっと重いなと思って・・・・・」
「だったらそう言え。和食でも変更してやったのに」
予想通りの反応だ。
「そんな、真歩さん楽しみにしてはったのに」