おためしシンデレラ


エントランス脇の植え込みの陰で目立たぬように立つ。ここならば駐車場への入口も見えるから三村が帰ってきたら分かるはずだ。

どのくらい待っただろうか。
ウィンカーを出して駐車場へと入ろうとする三村のSUV車が見えた。


そして莉子が固まる。



通りの街灯に照らされた車の中、助手席には真歩がいた。



莉子が打ちのめされる。



一体、自分は何をしにここに押しかけてきたのだ。三村に何を訴えて、何をしてもらうつもりだったのだ。


莉子が踵を返して駐車場の入口とは反対方向に歩き出す。


卑怯者。


あの夜のことで三村に責任なんて求めてはいけないのに。


莉子が願って、莉子が望んで、莉子が醜態を晒して、三村に縋ったのに。

歩きながら笑いが漏れる。
笑いながら何度も何度も目元を拭う。



道行く人が好奇の目で莉子を見ているのも気にせず、歩いて、泣きながら歩いて、フラフラになりながら家まで帰った。
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