拗らせ女子に 王子様の口づけを
沙織との距離が更に開いたまま9月も半ばが過ぎていった。
沙織の中で何かがあったのか、少し前からいつも籠っていた会議室から出ていることが多くなって、設計に行く度にこっそりとその姿を確認する事が出来るようになった。
なんとなく、なんとなくなんだけど。
沙織の顔色が悪い気がする。
今はまだいいが、ここで無理をすると数日後に熱でも出しそうだな。
今までならば沙織の不調を読み取ると否応なしに体を休ませさせた。
だけど、今はこの距離のせいで声をかけることすら戸惑わせる。
「守屋、ちょっといいか?」
近くにいた守屋を廊下へ呼び出してそれとなく沙織の近況を聞き出すことにした。
「沙織ちゃん?…………確かに今ちょっとオーバーワークぎみね。9末〆で依頼が増えてきてるかも」
やっぱり。
三矢に……なんて頼みたくもない。
あいつがどんだけ好物件だろうと気に入らねぇんだよ。
あいつだけは、嫌だ。
「ねぇ、野々宮。あんたと沙織ちゃんの事だから私は何も言わない。だけど、私は沙織ちゃんの味方だから」
たぶん守屋は何も知らない。
それでも、こうやって沙織の心配をして俺に威嚇してくる辺り俺と沙織の今の関係が決して良いものではないことを感じ取っているのだろう。
「あぁ、それでいい。沙織の事、頼む。
後、多分あいつあのままだと熱出すわ。一言言っといてくれないか?」
少し考え込むような間があって守屋が呆れたようにため息をつく。
「………………、自分で言わなくていいの?」
「あぁ。━━━━頼む」
「分かったわよ。本当、バカね」
「はっきり言うなよ」
ハハッ、と自嘲した笑いが漏れた。