拗らせ女子に 王子様の口づけを
三矢は曖昧に笑って、小さく頷いてくれた。
「沙織?」
声をかけられて大きく肩があがり、声のする方へ顔を向ける。
いつの間にか近くまで来ていた奏ちゃんと秦野さんが並んで立っていた。
ここを離れるのが少し遅かったようだ。
「お疲れ様です」
三矢の声で我にかえり、思わず三矢を見た。優しく頷いて私を見る三矢に心が落ち着いて再び奏ちゃんと向き合った。
「お疲れさま。沙織?帰りか?帰れるか?」
「なっ、……お疲れ様です。なんて事言うんですか、帰れますよ失礼な」
「早川さん?こんばんは。こんなところで会うなんて偶然ね」
「秦野さん、お世話になっております。あ、こんなところで申し訳ないんですが、近くカーテンを決めにお客様とショールームに寄らせて貰うので又宜しくお願いします」
にこりと笑って秦野さんと向き合う。
心の中は心臓が煩いほど動いてる。
動揺を悟られたくなくてニコニコ笑顔を作るしかなかった。
「沙織?今の明るいうちに帰れよ。危ないからな」
「小学生じゃあるまいし、暗くなっても帰れます!」
奏ちゃんの中で私の位置はどれだけ子供扱いなんだろう。
分かっていたことでも今の私にはその現実が重くのし掛かる。
秦野さんの前で言われたくなかった。
女としても彼女と張り合えない。
その事を突きつけられた気がした。
「今日は俺が送るから大丈夫ですよ。早川?行こうか」
早くここから離れたくて、三矢のその声に大きく頷いた。
「何処か行くのか?二人で?」
少し眉を寄せた奏ちゃんが、声のトーンを落として聞いてきた。
「メシ、行くんですよ。あ、長瀬さんには連絡済みですから。安心して下さい」
その台詞に奏ちゃんの声音が更に低くなる。