拗らせ女子に 王子様の口づけを
「沙織?俺、聞いてないけど?」
「言う必要はないと思うけど……みのりにだってそんな連絡いらないわよ。二人とも人の事なんだと思ってるのよ」
ため息混じりにそう言うと、
「今までの行いだわ」
とすかさず返された。
なんだよ、くそぅ。
ぐっ、と言葉に詰まっていると秦野さんが呆れたように声を挟んだ。
「ねぇ、奏輔。過保護すぎるわよ。私達も行きましょう?」
過保護と言われて、カッと顔に熱がたまる。
お願い赤くならないで。
秦野さんが奏ちゃんを『奏輔』と呼んだ。前は『野々宮君』だったのに。
二人の親密さを見せつけられて胸が痛い。
「大丈夫、ですよ。じゃあお先に失礼します」
「……じゃあね、奏ちゃん。秦野さんも失礼します」
顔を合わせることが出来なくて、視線を合わせないまま頭を下げて、くるりと向きを変える。三矢の袖口を小さく引っ張って『行こう?』と促した。
「分かった。沙織、帰ったら連絡して。三矢、頼んだぞ。お疲れさん」
低くなった声音が変わることもなく、譲歩した、と言わんばかりに奏ちゃんは眉を寄せたままだ。
「分かったわよ」と、反抗してそのまま二人から遠ざかる。
後ろで「じゃあ、俺も会社に戻るから」と奏ちゃんの声がして、「ええ、またね」と秦野さんの声もした。
良かった。
二人はこれから約束してた訳じゃないんだ。