拗らせ女子に 王子様の口づけを
「あのね、私の仕事の付き合いのある人が奏ちゃんの高校時代の元カノだったの。で、こっちきて会社で再会して最近奏ちゃんの口からポロリと名前が出てきたの。会ってるみたいなんだ」
「まぁね、腐るほど彼女もいたから地元のここじゃあそんな事もあるわよね」
「そうなの。名前を聞いたとき凄くショックで。いつもの事、なのにいつもみたいに切り替えることが出来なかったの」
「うん」
「二人で会ってるところも偶然見かけた」
「うん」
「凄くお似合いだった」
「うん」
「奏ちゃんが帰って来て、浮かれてたんだろうなぁ……現実に引き戻された気がしたの」
「うん」
「そう思ったら、恥ずかしくて、悔しくて、悲しくて、男と女の土俵にも上がれてない自分に嫌気がさして、ちゃんと私を見てほしくなっちゃった」
「うん、そっか」
「だからね、ちゃんと告白する……って、今までも本気だったけどね」
「うん」
「これが最後だから」
「いいの?」
「ふふふ。みのりだって言ってたじゃない。もうすぐ私も26歳よ?色々頑張らないと!大丈夫。後悔してもいいんだって思うくらい考えて決めたの」
「うん」
話しながら目に力が入る。
気を抜くと涙が出そうだ。
本当は嫌だ。
諦めるなんて出来っこない。
奏ちゃんしか見えない。