拗らせ女子に 王子様の口づけを
約束は取り付けたものの、月末の忙しさと、月初の会議の多さで、奏ちゃんと顔を合わせることが出来なかった。
それでも昨日の夜、今日の私の誕生日はなるだけ早く終わらせるからとラインをくれた。
今日は朝から新規のお客様との打ち合わせが夕方あるだけだからと、19時には終われるから、と言っていたんだ。
嬉しかった。
告白する!なんて言ったから緊張もしてるけど、それでもうきうきしながら一時間ほど残業して、先に待ち合わせのカフェに向かった。
カフェに着いたのが18時半すぎで、19時頃に終わると言っていた奏ちゃんを待つにはちょうどいい時間だった。
今日はちょっとだけ背伸びをして、パフスリーブのシフォンワンピにビジュー付きのヒールを合わせて、ホテルディナーに行く予定だった。
ホテルオーラルのレストランは夜景が抜群で、カップルで行くには最適!なんて書いてある情報雑誌を読んでそこに決めた。
その後はバーで飲みなおして、お泊まりまでは考えてないけれど、これだけいい雰囲気でシチュエーションを設定したら『妹の私』じゃない、一人の女の子として見直してもらえるかもしれないなんて期待した。
カフェの窓際に座り、外を歩く人をチラチラ気にしながら奏ちゃんを待った。
どうにもこうにも落ち着かない。
そわそわして何度も携帯を確認した。
朝から入っていたみのりのラインを読みなおして、気合いを入れ直す。
『happy birthday!沙織!緊張するかもしれないけど、せっかくの誕生日なんだから楽しむことを忘れずにね!』
うん。
大人になって、初めて奏ちゃんと過ごせるんだ。
楽しまなきゃ。
顔がにやけてどうしようもない。
両手で頬に手をやり、ほぐすように手を動かす。それでも口角があがってしまう。
奏ちゃん、早く来ないかな。
時刻は19時05分。
奏ちゃんからの連絡は、まだ来ない。