拗らせ女子に 王子様の口づけを

時間がたつごとにドキドキしていた気持ちが不安に変わっていく。

何度も携帯を見直して、5分、10分と過ぎていく時間に平静を装えなくなってきた。

まだ、まだ何かあったのか心配するほど時間が過ぎたわけじゃない。
出先でお客様に捕まったら30分や1時間なんてあっという間に過ぎるなんてよくあることだ。

それでも、不安になる気持ちが拭えなくて、やっと入ってきたラインによる連絡に安堵したのは19時50分の時だった。


『遅くなってごめん。お客様との話が長引いた。今すぐ向かうから』


良かった……。
新規のお客様って言ってたし、長引いたってことはいい反応があったってことよね。
奏ちゃんの営業成績に繋がるわけだから、喜ばしいことだ。

拗ねてる場合じゃない。
何かあったわけでもない。


『分かった。近くで打合せしてたよね?ならもう外で待ってる。お疲れ様!話が弾んで良かったね♪』


ちょっとだけ拗ねた気持ちを隠して、奏ちゃんが気を使わないように明るく返信を心がけた。
時間も遅くなったし、お店の外で待ってたほうが早いよね。

そう思って、ラインを打った後鞄に携帯をしまい席をたった。

店を出て、奏ちゃんから聞いていた打合せしてた店の方向へ少し歩き、立って待てそうな場所で奏ちゃんを待った。


さっき少し下がったテンションが、あと少しで奏ちゃんに会えると思ったら、待っている間に又浮上してきた。

このワンピーズ、可愛いって言ってくれるかな。
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