拗らせ女子に 王子様の口づけを
「沙織!」
奏ちゃんの声がして、一気に胸が高鳴る。
「奏ちゃん!お疲れ様」
「こら。危ないから店で待っとけって折り返したのに何で外にいるんだよ」
「へっ?携帯?」
慌てて鞄から携帯を出すとラインを一件受信していた。
『暗くて危ないから、外で待たなくていいから店に居ること』
過保護なラインを既読にして、素早く『ごめんね?えへ』って言ってるくまのスタンプを返信しといた。
奏ちゃんの携帯から受信の音がして、それを見てため息をひとつ。
目の前で、えへ?と笑って見せた。
そんないつものやりとりをしていると、クスリと笑う声がした。
視線を向けると何故かそこに秦野さんが居て「こんばんは」と声をかけられた。
どうして秦野さんがいるのかさっぱり分からず奏ちゃんに視線を投げ掛けると、それに気付いた奏ちゃんが、笑った。
それはもう得意気に。