拗らせ女子に 王子様の口づけを
申し訳なさそうに眉を寄せて話す秦野さんに逆に申し訳なくなる。
秦野さんのせいじゃない。
この年になったらきっと誰だって気付くこのシチュエーションに第3者を連れて来たってことは、私と二人になりたくなかったんだ……なんてひねくれた考え方が頭を支配した。
奏ちゃんが離れたこの隙に「じゃあ」と帰っていこうとする秦野さんの手を咄嗟に掴み、首をゆっくり左右に振った。
「いいんです。秦野さん、一緒に行きましょう?」
「えっ、でも……」
「ふふふ。もう本当奏ちゃんバカですよね。高いご飯奢って貰いましょ?ふふ」
「早川さんがいいなら……奏輔のお金で飲もうか?ね!」
「はい!」
戸惑いながらも了承してくれた秦野さんと奏ちゃんの捕まえたタクシーに乗り込んだ。
私、なんでこんなバカが好きなんだろう。