拗らせ女子に 王子様の口づけを
食事も終わり、予定だとこらからバーで軽く飲むはずだった。
『ねぇ奏ちゃん!せっかくホテルのレストランなんだから、バーにも行ってみたい』
そう言った私の願いを、了承してくれた。
でも……今日はもう帰りたいな。
レストランを出て、秦野さんと二人で奏ちゃんにお礼を言う。
「奏ちゃん、お食事ありがとう」
「私までご馳走してもらってありがとう」
「沙織の誕生日だしな。たまにはいいさ。梨花にも世話になったし、この前は悪かったな」
「帰ろうか」
ここは私が口を出して、早々に帰路に着きたいところだ。
なのに奏ちゃんは「何言ってんだよ」とまたもや帰りたがっている秦野さんまで巻き込みバーへ来た。
三人で。
「皆で飲んだほうが楽しいよな、沙織?」
なんて言われたら、私は帰りたいから二人で行きなよとも言えず……二人にもしたくないだけだけど。
かといって三人で行く意味も分からなかった。
今回ばかりは帰ると言い張る秦野さんを最終的に誘ったのは結局私の役目だった。
もうね、面倒臭くなってきたのよ。
さっさと飲んでさっさと帰りたかった。
奏ちゃんに甘い期待なんてするのが間違ってたのよね。
ここにもカップルシートがあって、そこで仲良く座るカップルを横目に私達はテーブル席に付いた。
私があそこに座れる日は来るんだろうか。
各自飲み物を頼み、ぼんやりと少し離れた窓へ目をやる。
ここからじゃ夜景が見れないな。
小さくため息を吐きながら視線をテーブルに戻す。
目の前に座る奏ちゃんが鞄から長細い箱を取り出して、私に差し出した。
「沙織、happy birthday。これ」
「へっ?」
「プレゼントだよ、誕生日なんだから」
「えっ?でもレストラン一緒に来て貰ったよ?」
「あれは、ただの食事だろ?」
そう言って手に持たされた箱は、ブリーの箱にブルーのリボンのかかった有名なお店の物だった。
ドキドキしながらリボンにてをやり箱を開けると小さなハートの付いたネックレスが入っていた。
「奏ちゃん……いいの?」
「沙織ももうそんな歳なんだよなーうん。きっとよく似合う」
「うわぁー可愛いじゃない。良かったわね早川さん」
「う、うん。ありがとう奏ちゃん」