信愛なる君へ


「あ…、いえ、気にしないでください」

「やっぱりか」

「え?」


氷雨さんから出た言葉を聞き、顔をみる。



「あの時のカフェにいた子でしょ」



続けて出てきた言葉にまた私はびっくりした。


「覚えて…たんですか?」

「修羅場に遭遇するなんて俺はじめてだったよ」


クククッと、喉を鳴らして笑う。


「わ、忘れてください…!」

「お前のことも忘れてた方がよかった?」

「そ、それは…ちょっと、悲しいです…けど」

「………………あの時の男とは別れたのか?」


予想をしていなかった質問に思わず戸惑う。




「別れました」

「そうか、辛かったな」


そう言って氷雨さんは私の頭をゆっくりと撫でる。




「……大丈夫ですよ!」



私は少し溢れそうな涙を堪えて笑顔いっぱいにこう言った。




「あの時の彼と別れることになったから、私は氷雨さんに出逢えたんです」






…本当に、心からそう思う。


< 21 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop