クールな御曹司と愛され政略結婚
気にしないのは、自分の考えたことも気にされたくないから?

そんなかわいげのない思いも浮かんだけれど、消した。


灯の言いたいことはわかる。

事情だらけのこの結婚で、そんなの言い出したらきりがないよね。

するって決めた。

そこからの話で、いいんだよね。


わかるよ。

でもね。



「納得してない顔だな」

「してる、一応」

「一応かよ」



腕枕をするように、片方の腕を私の頭の下に回して、もう一方の手で、頬や顎をなぞる。

灯ってもしかして、顔さわるの好きだな。



「まあいいよ、一応でも」

「いいの?」

「先は長いんだ。気になることができたら、いくらでも話そうぜ」



私の顎を少し持ち上げて、唇を重ねてくる。

こちらの意思を探るみたいに、何度かそっと重ね、大丈夫と踏んだのか、最後に甘く噛むように絡めてきた。

視線を合わせたまま、もう一度。

灯の手が顔から首、肩へと滑って、私の身体を抱き寄せる。

向こうのなめらかな背中に手を回すと、キスが深まった。

灯、熱い。


一番大事なことから目を背けている気がしなくもない。

でもたとえば、「私のこと好き?」と聞いたところで、絶対に「好きだよ」と言われてしまい、それが口だけじゃないこともわかっている、そこがこの関係の難しいところで。

それ以上のなにが欲しいのか、自分でもよくわからないところが、また問題で。


長い腕に抱きしめられながら、次第に激しさを増すキスを受ける。

甘いのに苦い。

幸せなのにつらくて、涙がにじんできたとき、チャイムが鳴った。


あまりにこの状況にそぐわない音だったので、私も灯も、動きを止めたまま、しばらく反応できずにいた。

再び鳴る深夜の電子音。



「…なんだ?」

「なんだろうね…」
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