クールな御曹司と愛され政略結婚
母とも父とも似ていない、破天荒な存在だった姉。

私がうらやんだ華やかさは、裏返せば孤独でもあったのかもしれない。

きっと私が、やすやすと他者に影響されたりしないだけの分別を身に着けるまで、姉は一定の距離を置くことで、守ってくれていたのだ。



「…今度一緒に買い物でも行こうかな」

「そういや、例のミュージックビデオの制作、うちに決まったぜ」

「ほんと、準備しなきゃね」



それはいいニュースだ。

下期もまた忙しくなる。



「とにかく"備え"な。時間的なことも含め」

「了解」



制作するのは、日本の歌姫と呼ばれているトップ女性アーティストのMVで、灯も私も、一度仕事をしたことがある。

さすが女王様だけあって、とにかく時間におおらかで、3、4時間の遅刻は当たり前、さらには遅れておいて、次の予定があるからといきなり帰ってしまったりするのだ。

気が乗らなければリテイクにも応じてもらえず、衣装もメイクも自分のお気に入りのスタッフしか寄せつけない。

正直、二度とごめんこうむりたいと前回思ったのだけれど、そこはそれ、彼女のアルバムにビーコンの作品を並べてもらえるのは、非常にプラスになる。



「まあ、灯は気に入られてたもんね」

「やめろよ…」



前のとき、危うくハーレムに加えられそうになっていた。

もしかしたらそれが、今回うちに決まった理由のひとつかもしれない。

女王様がご機嫌斜めになったら、灯を差し出してしのごう。

と考えていたのはばれていたらしく、不機嫌に横目で一瞥された。



「寝よ」



灯がそう言って枕元に手を伸ばし、ライトを落とす。



「うん、おやすみ」
< 186 / 191 >

この作品をシェア

pagetop