クールな御曹司と愛され政略結婚
こうしている間も、キスをたくさんしてくれるのが好き。

手を握っていてくれるのが好き。

目が合うと笑ってくれるのが好き。

高まると、不遜な表情が崩れて、ちょっと甘えてくるような、かわいいところが見えるのが好き。


なかなか厳しいボスで、ふたつ上の先輩で、幼なじみで、ただでさえごちゃごちゃしていた関係に"夫婦"なんてものがいきなり増えて。

でも距離が縮まったなんて思えなくて、むしろ足の踏み場もなくなったようで、いつも不安でつま先立ちして歩いていた。

最初から、愛はあったのにね。

信じれば見えるところに、いつだってあったのに。



「灯…」

「ん?」



好きなんて言葉じゃ足りないくらいなんだけど、どうしたらいい?

ぎゅっと抱きついて、伝わるようにと願ったとき、サイドテーブルの上で、携帯が激しく震えた。

お互いぎょっとし、しっとりした空気が一瞬でどこかに吹き飛んだ。



「切っとくの忘れた…」



灯が低くうなって、画面を確認しつつも、出るのをためらっている。



「菅原だ」

「この時間だと、トラブルじゃない?」

「だよな…」



早く出てあげてと促すと、ようやく心を決めたらしい灯が「はい野々原」とあからさまに乗り気でない声を出した。



『あっ、灯さん、今から編集スタジオ来られます? CG屋から納品があったんですが、もう全然要件満たしてなくて、大混乱で!』



耳をくっつけていた携帯から、泣き声がする。

灯が裸のおなか周りをこすりながら、深いため息をついた。



「…わかった、行く」

「私も行く、事情掴んだらCG会社と交渉するよ」

「頼む」
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