恋色流星群
なんだか、すごく。
瞼が重い・・・
壁にかかる時計が指すのは。
草木も眠る、丑三つ時。
『陽斗くん、帰らなくて大丈夫?明日、仕事早かったりしない?』
本当は、まだこの温かい膝の上にいたい。
「早くないよ。だから、いていい?」
いつも私の期待を裏切らない、静かな声に。
鼻先が、つんとする。
『ねぇねぇ。』
「うん?」
『なんで、さっき彼の話を聞けって言ったの?』
あの、立ち上がる殺気の後で。
瞳に滲んだ、深い悲しみ。
「ああ・・・。笑
こんな話、理沙にするのもあれなんだけど。」
彼の右手の平が、柔らかく髪に伸びてきて。
思わず、心地よさに目を閉じる。
「俺も、伝えたかったことを。
伝えきれずに、別れたことがあったから。」
『・・・そうなんだ。後悔してるの?』
「うーん・・・別れたいと言ったのは彼女からで。俺も、その理由はよく理解してたから。
それを止めようとか、そういう話がしたかったわけじゃないんだけど。」
私の髪を撫でる、今の彼に。
優しさや、思いやりを教えた人。
「だけど、それでも。
ただの人になる前に、伝えなきゃいけないことはあったから。」
『ただの人w』
「そう。さっき、“あ、すげぇ的確!”と思ってさ。笑」
この、陽だまりみたいな彼の笑顔を。
真正面から見つめる権利を、許されていた人。
『そうだ、陽斗くん、桜桃好き?さっき彼が持ってきたんだけど。
洗うから、一緒に食べない?』
「いいの?理沙に持ってきたんだろ?」
『いいいい、捨てる予定だったんだけど。陽斗くんが食べるなら、私も食べる。』
「なにそれ。笑
じゃあ、一緒に食おう。」
この、熱い眼差しを。
一身に浴びる権利を、許されていた人。
カチャカチャ、と。
小さな爪の音を立てながら、レオンが寝室を出てきた。
『おいで。』
小さな尻尾を振りながら、私の膝小僧に前足をかける温かな体を抱き上げる。
なんでだろう、“昔の人”の気配は。
いつだって、切なくさせるくせに。
ひどく、温かい。