恋色流星群



手を伸ばそう、としたら。











「そんなにひどくないよ。」




頭の上から降ってきた柔らかい声の主が。

肩越しから、先にそれを奪って、持ち上げた。








『嘘つき。この顔、かなりやばいよ。』

「やばくないって。笑
そこ、座って。俺がつけてあげる。」



背後の声の近さと、冷蔵庫に反射する彼の影から。


半歩でも、後ろに足を引けば。

厚い胸に堕ちてしまうんだろうな、と覚悟する距離。








こんな、簡単なことにさえ。

いちいち躊躇う。




まだ、どちらに堕ちるべきなのか。

覚悟がない、私は。












「おいで。」




左手を引かれて、彼の言うままソファへ戻る。

今となっては、ひどく狭い視界から彼の背中を見つめる。

















ソファについたら、すぐに目を閉じよう。


こんな顔を、見られるのも。

こんな顔を、いつもどおり愛しく見下ろす、彼の瞳を見てしまうのも。





想像するだけで、汗をかきそうだから。




< 234 / 311 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop