恋色流星群
手を伸ばそう、としたら。
「そんなにひどくないよ。」
頭の上から降ってきた柔らかい声の主が。
肩越しから、先にそれを奪って、持ち上げた。
『嘘つき。この顔、かなりやばいよ。』
「やばくないって。笑
そこ、座って。俺がつけてあげる。」
背後の声の近さと、冷蔵庫に反射する彼の影から。
半歩でも、後ろに足を引けば。
厚い胸に堕ちてしまうんだろうな、と覚悟する距離。
こんな、簡単なことにさえ。
いちいち躊躇う。
まだ、どちらに堕ちるべきなのか。
覚悟がない、私は。
「おいで。」
左手を引かれて、彼の言うままソファへ戻る。
今となっては、ひどく狭い視界から彼の背中を見つめる。
ソファについたら、すぐに目を閉じよう。
こんな顔を、見られるのも。
こんな顔を、いつもどおり愛しく見下ろす、彼の瞳を見てしまうのも。
想像するだけで、汗をかきそうだから。