待ち合わせはあのカフェで



神谷さんに手を引かれる。

ドキッとした。
え、あ、うそ…



「あ、お時間大丈夫ですか?」

「はい」



大丈夫じゃないけど、嘘ついた。

こんな機会滅多にないし、まだ神谷さんと居れるなら時間なんて気にしない。



「なんか、すいません」

「いえいえ、謝らないでください」



自動ドアを通って、オートロックを解除してくれて
どうぞ。と言われ、先に中に入った。

…言葉が出てこない。
すごい、このマンション。



「共同ラウンジこっちです」

「あ、はい」



俺が住んでる所とは違いすぎて、きょろきょろ中を見回してしまう。

え、神谷さんってめっちゃお金持ち?
お金持ちのお嬢様とか?いや、お嬢様がバイトするか?

案内されたラウンジの電気がパチンと音を立てながらついた。
ひっろ、やっば。



「お好きな所に座って待っててください。切るもの持ってきます」



早足でラウンジを出て行った。
完璧、神谷さんのペースに持っていかれてる。
いや、持っていかれて助かったというかなんというか。

ソファーに座ると、フカフカしていた。
ラウンジも見回した。

俺、場違いなんじゃないか。



「すいません。お待たせしました」

「いえ」



持っていたケーキの箱を目の前のテーブルに置いた。
慣れた手つきで、箱を開けてタルトとシフォンケーキを切ってまた箱を閉めた。



「オレンジジュース、苦手ですか?」

「いや、大好きです」

「よかった」



袋にケーキの箱と缶のオレンジジュースを入れて渡された。
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