イケメン貴公子のとろけるキス

それは小夜さんが、この企画部に来る前にローマ支社にいたからこそ出てきたセリフだ。

そちらで営業をバリバリとこなし、人脈も広い。
私とは違って、海外の支社のほうが在籍期間は長い。
ローマは確か、三年くらいいたはず。
その前にもシカゴやバンクーバーなんかにもいた、グローバルな人だ。


「でも私、イタリア語は全然しゃべれないですから」


英語なら日常会話くらいはなんとかなるとして、イタリア語はそれこそちんぷんかんぷんだ。


「心配いらないわ。ルカがいるから」

「ルカ……?」

「ルカ・シモーネよ」


小夜さんの言い方からすると、きっと“人”に違いない。
でも、聞き覚えのない名前には、首を右に四十五度ひねるしかなかった。


「ミナも何度か、彼とはメールのやり取りをしてるはずよ?」


彼を知らないはずはないというニュアンスが、その言葉には含まれていた。


「そういえば……」

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