イケメン貴公子のとろけるキス
イタリア語らしき言葉で書かれたメールを、何度かもらったことがあるかもしれない。
名前はLukaだった……だろうか。
だけど内容は解読不能だから、いつだって小夜さんにそのまま転送していたのだ。
「彼ね、日本語はほぼ話せるの」
「え? そうなんですか」
「イタリア人と日本人のハーフだから」
それならイタリア語じゃなくて日本語でメールも書いてくれたらいいのに。
自分の語学勉強の不足を棚に上げた。
「彼にローマでも案内してもらうのよ。三十歳でミナと歳も近いから話が合うんじゃない? グッドアイディアだわ」
小夜さんはそう言うなり自分のパソコンに向かったと思ったら、カタカタカタとものすごいスピードでキーボードを叩き始めた。
やけに楽しそうに指先が弾む。
いったいなにを打っているんだろう。
「ルカに早速メールを送っておいたから」
「え……?」
自分のことをメールされているとも知らず呑気に見守っていた私に、小夜さんは「これで大丈夫よ」と嬉しそうにニコニコと笑った。
私の返事も待たずして、さっさと約束を取りつけてしまったらしい。
小夜さんの行動力に、私は白旗を掲げるしかないのだった。