イケメン貴公子のとろけるキス
それだけじゃない。
ルカと美穂さんが付き合っているという噂も、このごろチラホラ耳にしていた。
イタリアと日本で密に連絡を取り合いながら、ふたりは愛を深めていったんだろう。
あの夜は、ほんのいたずら心で私を抱いただけ。
もしかしたら、同じ日本人女性というだけで、私に美穂さんを重ねてしまったのかもしれない。
同じく企画開発部に所属する女子社員たちと、立ったまま打ち合わせかなにかをしているルカをぼんやりと眺めた。
離れていれば自然と薄れていく想いは、距離的に近づいてしまえば簡単なことじゃない。
ルカが日本に来ると聞いたときに、破裂しそうなほどに膨れ上がった気持ちは、彼には美穂さんがいるとわかったところでしぼんでくれたりはしなかった。
ふと、ルカと目が合った。
不意打ちだったせいで咄嗟に逸らすことができない。
ルカは遠くから極上の微笑みで手を振ってよこした。
どうしてそんな態度がとれるのか、私には理解不能だった。
あの夜のことは、なかったことにしたい。
そういうことなのかもしれない。
――いや、もしかしたらあれは夢だったのかも。
ふたりの間にはなにも起こっていなくて、私ひとりが夢から抜け出せていない。
そうなのかもしれないとも思った。
素直に笑って返せなくて、ついそのままルカから視線を逸らしてしまった。