絶叫脱出ゲーム③~クラスカースト~
あたしたちの目にはそう映っていたけれど、もしかしたらあすかの動きが封じ込められていたんじゃないか?


奴隷部屋で電流の強さを制御されていた時の事を思い出していた。


電流の強弱を利用して人の動きを封じ込める。


もし、チップでも同じ様な事ができるとしたら?


そして、そのタイミングを中村君があらかじめ知っていたとしたら?


あたしは顔を上げてステージ上で昼食の用意をしている男たちを見た。


このバトルに勝つには力の強弱でも、人間関係でもなく……<mother>の連中に気にいられる事。


そう思った瞬間、スーツの男と目があった。


男はあたしを見てニヤリと笑う。


その笑みがどんな意味をもっているのかわからないが、奴隷部屋から脱出できたあたしの立場は悪くないはずだった。


コロッセオの中でも、あの男はあたしに職を与えると約束をしたのだから。


でも……なんだろう、この胸騒ぎは……。


「朱里、どうかしたの?」


「ううん、なんでもないよ」


あたしは彩美にそう返事をして、掃除を再開したのだった。
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