オフィスの野獣と巻き込まれOL

「おお!誰かと思ったら、美帆ちゃんじゃないか!!」

初老のおじちゃんが、よろよろと抱きつかんばかりに両手を広げてやって来た。

昔馴染みの常連さんだった。

店にいた頃中間管理職で、悩んで髪の毛が無くなりそうだと嘆いていたおっちゃんだった。

その人が、ふらっと私のいるテーブルにやって来た。

「なんだあ、どっかで見たことがあると思ったら、やっぱり美帆ちゃんやないの?」

「うん、和夫君久しぶり」私は、ようやくおっちゃんの名前を思い出して呼んだ。

昔もそうしてた。

その時も、このおじさん。家で奥さんに、名前で呼ばれないと、ここで愚痴っていたっけ。

「嬉しいね、まだ名前覚えててくれたんだ」

「もちろん、忘れないよ」私は、視線を上に向ける。

「おかげさまで、まだわずかだけど残ってるよ」

和夫君は、自分の頭をぺちっと叩いて、ガハハと笑った。このやり取りもお約束だ。

和夫くん、気を良くしたのか酒を勧めてくる。

「ああ、彼氏にお酒あげてくださいな」淑子ママに向かって和夫君が叫ぶ。

和夫君、気前よく奢ってくれる気だ。
< 106 / 349 >

この作品をシェア

pagetop